行政書士の松井です。
今回のテーマはフィリピンパブです。
- フィリピンパブ営業に必要な許可や手続は?
- フィリピンパブ許可申請の注意点
- フィリピンパブとビザについて
主に上記ついて解説したいと思います。
フィリピンパブ営業に必要な許可や手続は?
必要な許可は2つ
結論から言うと、フィリピンパブを営業するにあたっては
- 風営法1号(社交飲食店)許可
- 飲食店営業許可
この2つが必要です。
フィリピンパブは客の横に座って談笑したり、お酌をしたりするお店ですが、これらの行為は風営法に定められている「接待行為」に該当します。
そして、接待行為を伴う飲食店は風営法の1号許可と呼ばれる「社交飲食店」の許可を取得しなければならないのです。
またそもそも前提として、フィリピンパブはお酒を提供しますので、飲食店営業の許可も取らなければなりません。
このように、フィリピンパブは「風営法許可」と「飲食店営業許可」の2種類を取る必要があるということです。
営業許可までの流れ
弊所でフィリピンパブの許可申請を行う際は以下の流れで手続を進めます。
↓
②希望物件を決める。
↓
③その場所が許可要件(後述)を満たしているか調査
↓
④営業所の構造が許可要件(後述)を満たしているか現地確認(スケルトンの場合は業者を交えて打ち合わせ)
↓
⑤物件契約
↓
⑥必要な書類の収集、申請図面作成のため現場測量
↓
⑦保健所にて飲食店営業許可の申請
↓
⑧警察署にて風営法許可の申請
↓
⑨保健所、警察の現場検査(場合によっては消防署・市役所も)
↓
⑩飲食店営業許可がおりる
↓
⑪補正手続
↓
⑫風営法許可がおりる(申請日から45日※)
※大阪府の場合
ポイントとしては、場所や物件がここでいいのか?という調査を最初にしておくべきであるということと、そして、飲食店営業許可がおりた後でないと風営法の許可もおりないということです。
物件の場所や構造の要件は後述しますが、要件を満たしていない(許可がおりない)物件を契約してしまうと後々大変な経済的損失になってしまいます。
また、風営法の社交飲食店は文字通り「飲食店」であることがベースとなっていますので、保健所から飲食店営業許可証が発行されない限り、警察の現場検査が問題なく終わっていても風営法許可がおりません。
飲食店営業許可証の発行は、保健所の現場検査完了から2週間程かかる場合が多いので、早めに現場検査の日程調整をしておくことが大切です。
飲食店営業許可に必要な要件は、主に店内の設備についてです。
厨房内
- 2槽シンク
- 手洗器
- 扉付きの食器棚
- 給湯器(2槽シンクからお湯が出る)
- 排水溝(大阪の場合、調理をしない店は不要)
トイレ
- 独立した手洗器(タンクの流水は不可)
厨房の手洗器については、法改正以降、蛇口をひねるタイプのものが不可になっています。
これは手指の接触による感染症予防対策が根拠となっており、手指を触れずに流水できるものを設置する必要があります。
別記事で詳しく書いていますので、こちらも参考にしてください。
フィリピンパブ許可申請の要件と注意点
フィリピンパブの風営法許可申請にあたり、以下の4つの注意点があります。
- 人的欠格事由
- 場所の要件
- 構造設備の要件
- 申請者のビザ問題
それでは順番に見ていきましょう。
①人的欠格事由
人的欠格事由とは、「こういう人は風俗営業者になれませんよ」というものです。
具体的には、1年以上の懲役又は禁固刑に処せられてから5年が経過していない人や、過去に風営法違反で許可取消処分を受けて5年が経過していない人、破産者で復権を得ない人、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者などです。
こういった人が申請しても、絶対に許可はおりません。
審査中に警察から連絡が入り、「人的欠格要件に引っかかってますので申請取り下げて下さい」と言われて終了です。
なお、人的欠格要件に関しては、行政書士がどこかの機関に照会をかけて確認するということができません。
したがって、完全に自己申告になりますので、事前にご自身の経歴を振り返って頂き、身がキレイかどうか確認して頂く必要があります。
もちろん、弊所では事前面談で欠格要件の説明をさせて頂き、きちんと確認は取らせて頂いていますが「忘れてた」「勘違いしてた」「なんとなく言いにくかった←」などの理由でこちらが把握できないと、それ以上はどうしようもありません。
ご自身が人的欠格要件に引っかかっていないかの確認は慎重にお願い致します。
②場所の要件
フィリピンパブに限らず、風俗営業は許可が取れる場所と取れない場所があります。
場所の要件は、都市計画法の『用途地域』と営業所周囲の『保全対象施設』が関係してくるのですが、こちらも詳しくは下記ボタンから説明ページを読んでみてください。
許可が取れない場所の物件を契約してしまうと、物件契約にかかる費用が無駄になってしまいます。
ちなみに、不動産屋から「前も許可取れたんで、この場所は大丈夫ですよ」と言われることもありますが、安易に信用しないでください。
その地域のことに詳しい不動産屋とは言え、風営法に関しては素人ですし、そもそも前も取れたからといって今も許可が取れるとは限りません。
③構造設備の要件
人、場所がOKであれば、いよいよその物件自体の中身の問題です。
風営法では許可の種類ごとに構造設備の要件が定められており、フィリピンパブが対象となる社交飲食店では「客室内に高さ1m以上のものを設置しない」や「営業所の外部から客室が見えてはいけない」などの規制が定められています。
詳しくは下記ボタンから「③構造要件」を参照してください。
この構造設備の要件を満たしていないと、客室として使える場所が限りなく狭くなったり、最悪は工事をして構造を変えないと許可が取れないということにもなり得ます。
構造設備の要件に関しては「これは検査に通らない」「ここだけ手を加えたら大丈夫」など、経験に基づいた判断が大きい部分です。
したがって、事前に風営法業務の経験が豊富な行政書士を呼んで確認させることをオススメします。
④申請者のビザ問題
フィリピンパブの申請者が日本人であれば、前述①の人的欠格要件を満たせば問題ありませんが、外国人の場合は話が変わってきます。
人的欠格要件を満たすことに加えて、在留資格の問題が生じるからです。
外国人が風俗営業の営業者になる場合
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
上記どれかの在留資格を取得している必要があります。
フィリピンパブをはじめ、各種風俗営業は外国人が営業できる在留資格が極めて限られていますので注意が必要です。
フィリピンパブとビザについて
申請者だけでなく、キャストとして働くフィリピン人の女の子に関しても、働ける在留資格が限られています。
必要な在留資格は申請者(オーナー)と同じく
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
のいずれかです。
上記以外の在留資格で日本に滞在する外国人がフィリピンパブなどの風俗営業の店で勤務すると、バレたときにビザの更新に支障をきたします。
また、日本のフィリピンパブで働くフィリピン人の中には、興行ビザで日本に滞在している人も多いです。
興行ビザは、ダンサーやタレントなどのエンターテイナーとしての仕事をすること目的に来日するための在留資格です。
ただ、この興行ビザではキャバ嬢やホステスのような業務ができません。
したがって、ダンサーとしての仕事はできても横に座って談笑したりといった接待行為ができないということになってしまいますので、働かせる女の子の在留資格にも注意が必要です。
まとめ
今回は、風営法1号許可が必要なフィリピンパブに焦点を当てて解説しました。
フィリピンパブといっても許可申請の手続自体は基本的に通常のキャバクラやラウンジと同じです。
ただ、申請者や従業員の在留資格問題がありますので、そこは注意が必要です。
また、申請者が在留資格も含めて要件を満たした外国人であっても、日本語のレベルがあまりにも低いと警察からは露骨に嫌がられます。
これは差別ではなく、許可申請や許可証受取の際に申請者への質問や重要事項の説明などがきちんと伝わらないことを懸念しているのです。
なので、申請者は申請窓口や検査での警察官との意思疎通がきちんとできる会話レベルの方が望ましいと思います。
以上、フィリピンパブの営業許可取得の参考にして頂ければ幸いです。