行政書士の松井です。
先日、弊所で許可申請をした麻雀店の許可が無事おりたのですが、申請から許可に至るまで山あり谷ありの案件でした。
その原因は保全対象施設です。
保全対象施設とは、条例に定められた学校や病院等の施設で、これらの敷地から一定の距離を超えていないと風俗営業許可がおりないものです。
今回の案件は、その保全対象施設からの距離要件を満たしていない物件だったのです。
風俗営業許可は場所的要件を見落とすと致命的
大阪府の場合、保全対象施設からの距離は100m(当該施設が商業地域に存在する場合は50m)を超えていることが風俗営業許可の条件だと定められています。
場所の要件は如何ともし難いので、物件を契約する前に必ず専門知識のある行政書士に調査を依頼するのが鉄則です。
しかし、今回の案件は、以前調査を依頼した行政書士が調査ミスをしたことにより、本来は許可がおりない物件なのに契約してしまったという経緯があったのです。
物件の契約費用に内装工事費用を加えると、1000万円を楽に越える金額ですから、その後に許可がおりないことが発覚したら、依頼者からすればたまったもんじゃありませんよね。
行政書士としてやってはいけない致命的なミスですし、同業者として本当に恥ずかしいことです。
専門スキルもないのに目先のお金欲しさに受任した結果、依頼者に大迷惑をかけていますから。賠償問題に発展しますよ。
んで、結局どうなったかというと、店舗の半分以上の面積が使えないという条件付きの許可になってしまったと。
トイレも使えない、厨房も半分使えないという謎の許可になっていました。
そのような事情もあり、今回弊所にご依頼されたときは「もう少しまともに使える形で許可を取りなおしたい」と。
聞けば、前回の申請時は保全対象施設から100m以内であることは確定したものの、どの部分がどこまで使えないかという測量等はしていなかったようなんですね。
ですので、今回は使える場所を明確にして、それに合わせて手直しの工事もやり直してもらうことにしました。
保全対象施設からの距離が微妙な場合にやるべきこと
今回の案件のように、保全対象施設からの距離要件を少しだけ満たしていない、もしくは満たしているか微妙な場合に判断すべきこと、やるべきことをまとめます。
まず、まだ物件を契約する前の段階の場合(まともな行政書士に依頼していればこの時点で発覚するはずですが)。
もし弊所の調査で発覚した場合、距離が完全にアウトならば当然「この物件はダメです」とご報告。
もし距離が微妙な場合、「リスクがあるので、できれば他の物件を探した方が確実です」と伝えます。
それでも「どうしてもこの物件がいい!」という場合は測量士さんに依頼して、保全対象施設からの正確な距離を測量してもらいます。
次に、今回のように既に物件を契約してしまっているという場合。
このケースでは保全対象施設からの距離がどれくらい被っているかによって対応が変わってきます。
物件の広さにもよりますが、仮に通常の広さの麻雀店とすれば、「10mくらい被っている」となると、さすがにその物件で申請を進めるのは厳しいかもしれません。
一方で、「1、2mくらいだけ被っている」という場合、案件によっては許可が取れる可能性があります。
例えば、営業所の建物自体は保全対象施設からの距離が被っているけれど、被っている部分は共有部のみという場合。
この場合は許可申請できます。
重要なのは「営業所からの距離」ですので、建物共有部は営業所ではありません。お店として申請する専有部分が保全対象施設から距離要件を満たしていればOK。
次に、営業所自体に被ってしまっているという場合。
これは、保全対象施設の方角や店の構造によって、「どういう被り方をしているか」にもよります。
例えば、お店の奥側に少しだけ被っているが、その部分を使わなくても営業に差支えがないという場合。
こうなると、被っている奥の部分に壁を作って物理的に塞いでしまい、完全に使えなくするという工事をすれば、許可が取れる可能性があります。
逆に、店舗を遮断するような被り方をしているという場合、工事をしても現実的に店として機能する構造にするのは難しいかもしれません。
いずれにせよ、正確に測量することで、どの部分が被っている(使えない)のか?を判断し、そのうえで警察と相談しながら慎重に進めていくことが重要です。
まとめ
今回は保全対象施設からの距離がギリギリだったり、アウトだったりという場合の考え方を書いてみました。
何度も言いますが、基本的にはそういった高リスクの物件は契約しないことがセオリーです。
どうしてもその物件じゃないとダメだという強いこだわりがある場合や、何らかの事情で契約してから発覚してしまったという緊急事態を想定しています。
ただし、工事で壁を作る等して保全対象施設からの距離を強引に保つというやり方はイレギュラーですので、所轄の警察署の担当者と綿密に協議しながら進めるべきです。
「保全対象施設からの距離がアウトでも、壁を作れば許可が取れるんだ」と安易に考えて物件を契約するのは絶対にやめて下さいね。
とにもかくにも、物件を契約する前に風営法を理解している行政書士に必ず調査依頼をかけることをオススメします。