キャバクラ等の風俗営業許可を法人名義で取得するメリット・デメリット

ども、行政書士の松井です。

 

風俗営業と言っても色々と種類があるわけですが、営業者が個人の場合と法人の場合が存在します。

 

各々の事情によりますが、キャバクラやラウンジ等の社交飲食店は個人名義が多く、ゲームセンターやアミューズメントカジノ、パチンコ店等は法人名義が多いです。

 

業種が何であれ、個人・法人どちらで許可を取るのかは自由ですが、クライアント様からは「個人と法人、どっち名義で許可を取ったらいいですか?」とよく聞かれます。

 

そこで今回は、個人名義と法人名義の違いや、法人名義で運営する際の注意点、さらに個人から法人成りする際のポイントをお伝えしたいと思います。

 

※パチンコ店などの数千万、億単位の金額が動く施設を除き、キャバクラ・ラウンジ等の社交飲食店など小型~中型規模の店舗を想定して解説します。

風俗営業許可名義は個人or法人どちらがいい?

結論から言えば、まずは個人名義でいいと思います。

 

既に法人として飲食店等を経営している売上を立てている実績があり、追加事業で社交飲食店を始めるといった場合はその法人名義で取得してもいいです。

 

しかし、まだ法人を持っておらず、営業者が管理者も兼ねて事業を始めるというような場合に敢えていきなり法人を立ち上げてやる必要性をさほど感じないというのが様々な店舗の立ち上げに関わってきた僕の個人的な感覚です。

法人名義で風俗営業許可を取得するメリット

色々な事情を勘案しても「最初から法人で営業したい」「売り上げが軌道に乗ってきたので法人化したい」という人のために、風俗営業許可を法人名義で取得するメリットについて考えてみましょう。

僕が考えるメリットは

 

  1. 代表者変わっても役員変更の手続だけで済む
  2. 合併・分割などのM&Aが可能
  3. 節税効果
  4. 信用

 

なのかなと思います。

①代表者が変わっても役員変更の手続だけで済む

後述しますが、風俗営業許可には「名義変更」という手続は存在しないため、お店を第三者に譲渡したりすることで営業者が変わる場合、新たな営業者の名義で新規許可申請をする必要があります。

 

しかし、法人名義で許可を取っていれば、代表取締役が変わったとしても新たな許可申請をする必要ななく、役員変更届を提出すれば済みますので、手続は大幅に省略されます。

 

また、会社ごと売却した場合も役員変更の手続だけでOK。

許可の主体はあくまで法人格にあり、役員個人ではないからです。

②合併・分割などのM&Aが可能

風営法には合併承認申請・分割承認申請という手続が定められています。

 

これにより、企業合併や事業分割といったいわゆるM&Aを行う際、新規許可申請を行う必要はありません。

 

この合併承認や分割承認については、基本的に書類審査となりますので、現地調査が省かれるいう面で営業者の負担は非常に軽くなります。

 

まぁ、パチンコ店などの大手法人ではよく使われる手法ではありますが、社交飲食店でこの手続はレアですけどね。

③節税効果

節税に関しては、一般的に事業所得が1000万円を超えると法人成りした方が節税効果があると言われています。

 

また、経費として認められる範囲が広がる等の利点もあります。

 

社交飲食店の営業はそれくらいの利益は十分すぎる程出せる業種ですので、いずれ法人成りはすべきだとは思います。(法人成りについては後述)

 

そのあたりのタイミング等は顧問税理さんと相談することをオススメします。

④信用

「信用」に関してですが、確かに大手グループの系列店であれば、ぼったくり等はないだろうという安心感はあります。

 

客だけでなく、酒屋などの関連業者も「ここならば安心して取引できそうだ」と信用されやすいメリットもあるでしょう。

 

でも、それくらいの規模のグループの店舗数というのは全体から見てもごく僅かですし、結局は各店の営業努力の積み重ねで客の信用を得ていくものです。

 

客はその店の名義が個人か法人かなんて気にしませんよ。

 

それよりも質のいいキャストと明朗会計に注力を置いた方がよほど信用を得られるのではないでしょうか。

法人名義で風俗営業許可を取得するデメリット

法人名義で許可を取得、営業する際のデメリットや注意点をまとめます。

 

  1. 役員が複数いる場合、欠格要件のリスクが増える
  2. 事業目的に「風俗営業」の記載があると融資に影響する場合がある
  3. 役員変更があった場合は随時届け出る義務がある
  4. 1店舗で違反行為があった場合、処分が他の店舗に及ぶリスクがある

 

ひとつずつ説明していきますね。

①役員が複数いる場合、人的欠格要件のリスクが増える

人欠格要件というのは、「こんな人には風俗営業の許可をおろしませんよ」という要件です。

 

人的欠格について詳しくはコチラをご覧ください。

 

役員が自分ひとりの会社であれば、自分だけが人的欠要件に引っかかっていないか確認すればいいだけなのですが、役員が複数いる場合、全員が人的欠格要件をクリアしないといけません。

 

身がキレイな人ばかりであれば問題ないのですが、経歴が怪しい人が役員に入っていると危ないかもしれません。

 

事前に役員全員が欠格要件に該当しないか、慎重に確認するようにしてください。

 

ちなみに、許可申請時は欠格要件をクリアして許可が出たとしても、営業開始後に役員の誰かが欠格要件に該当するようた事態になった際は、非常にリスキーです。

 

事態が発覚次第、迅速に当該役員を解任することは必須ですが、解任したから事なきを得るという保証はありません。

 

例えば、役員A、B、Cの3人で構成される株式会社ネクサスという法人で社交飲食店を営業していたとしましょう。

 

ある日、役員Bが個人的に別の社交飲食店を無許可で営業し始めて、警察に摘発されたという場合を想定します。

 

この場合、「役員Bが無許可営業で人的欠格事項に該当することになった」という情報は警察には丸分かりですよね?

 

仮に個人名義で許可を取ってる場合であれば、その個人が人的欠格事項に該当すれば許可取消は免れないでしょう。

 

法人名義の場合だと、この場合すぐに役員Bを解任したといっても、許可が取り消されるかどうかは事件の悪質性など総合的に判断して行われると思います。

 

このように、役員が増えれば増えるほど人的欠格事項の管理は重要になるのです。

②事業目的に「風俗営業」の記載があると融資に影響する場合がある

法人登記簿にはその会社の事業目的が記載されています。

 

銀行などから融資を申し込む際、当然、法人登記簿は必ず確認されますが、この法人登記簿の事業目的に風俗営業という記載があると、それが原因で融資を受けられなかったという事例があります。

 

もちろん、ケースバイケースではありますが、銀行からするとあまりいいイメージではないのは確かなようです。

 

ただ、風俗営業許可の申請の際、法人の事業目的に「風俗営業」が入っていることが必ず必要かと言うと、そうではないです。

 

少なくとも大阪府の場合、「風俗営業」の記載がなくても申請は受理されています。

 

最低限「飲食店の営業」くらいは事業目的に入れておくべきですが、「風俗営業」を入れるかどうかは、申請先の公安委員会に事前確認を取ってからでいいと思いますよ。

③役員変更があった場合に随時届け出る必要がある

役員に変更があった場合、変更があった日から20日以内に変更届を提出する必要があります。

 

20日と聞くと、一見余裕があるように感じます。

 

しかし、この変更届には役員変更後の法人登記簿を添付する必要がありますので、法務局への役員変更登記が完了していないと変更届を提出できません。

 

役員変更登記を提出してどれくらいの期間で登記簿に反映されるかどうかというのは、その時の法務局の状況にもよりますが、忙し時期だと2、3週間以上かかることも普通にあります。

 

法務局への役員変更登記と警察への変更届はセットで必要になるというところがポイントですね。

④1店舗で違反行為があった場合、処分が他の店舗に及ぶリスクがある

同じ法人名義でA、B、Cという3店舗の社交飲食店を経営しているような場合に、A店のスタッフが客引き行為で逮捕されたとします。

 

この場合、A店には確実に営業停止処分が下されますが、他のB店やC店に影響は出ないのか?というところです。

 

結論から言えば、その事件ごとにケースバイケースで警察が判断することなので、一概には言えません。

 

ただ、影響が及ぶリスクがあると考えて行動するべきです。

 

大手パチンコチェーン店の運営会社は、当然同じ法人名義で全国の店舗で許可を取っているわけですので、このようないわゆる「芋づる式処分」を最も恐れています。

 

ですので、運営するにあたってのコンプライアンスに非常に敏感です。

 

弊所にも大手パチンコチェーン店の運営会社から様々な相談がくることがあり、内容によっては非常に細かいこともありますが、芋づる式処分のリスクを考えるとそれくらい慎重になって然るべきですよね。

風俗営業許可を個人から法人名義に変える場合のポイント

当初は個人名義で許可を取ったが、事業が軌道に乗ってきたから法人成りしたいという場合について説明します。

 

結論から言えば、法人成りはできます。

 

できますが、風俗営業に「名義変更」という手続は存在しませんので、法人としての申請を新規で行うということになります。

 

そう言うと、「法人名義の新たな許可がおりるまで現在の個人名義の店は営業できなくなるのか?」という疑問が湧くかと思いますが、基本的には現在の個人名義でのお店は営業を継続したままで大丈夫です。

 

法人名義で新規申請→許可がおり次第個人名義の許可は返納、といった流れですね。

 

ただし、これをやるには「個人名義として申請した店の構造が変わっていないこと」が条件です。

 

勝手に工事などをして申請した内容と変わっていれば、法人成りどころか「無承認で構造設備を変更した」として処分の対象になってしまいます。

 

もちろん、単なるレイアウト変更や照明設備の一部変更程度であれば問題ないですが、変更した箇所については個人名義で変更届を提出して、きれいな状態で新たな法人名義の許可を申請するという流れになります。

 

現在の許可の状態のままで新たな申請を行うことを「現況有姿での申請」と呼んだりしますが、この現況有姿に該当するかどうかという判断は絶対に専門の行政書士に任せた方がいいです。

 

よく電話口で「うちはオープン時から変わってないから大丈夫」と言われて現地に行くと、実際は「いや、めっちゃ変わってるやん・・・」というのは日常茶飯事です(笑)

 

一般の人の感覚で「変わっている」というのと、法律の「変わってる」には大きな乖離がありますので、そこは注意してくださいね。

まとめ

今回は、風俗営業許可を取得するにあたり、個人or法人どちらがいいのかということについて、メリット・デメリットを挙げて比較してみました。

 

また、法人名義で許可を取得した後の運営面での注意点についても触れました。

 

法人化するかどうかの税金面での判断は顧問税理士さんとも相談して決めてもらうのが一番ですが、風営法でも様々なポイントがあるというのを知ってもらえればと思います。

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