キャバクラ・ラウンジの風営法許可で署によって判断基準が異なった事例

こんにちは、行政書士の松井です(^^)

 

先日、立入検査を無事終えて、後は許可を待つのみというラウンジ申請の案件があるのですが、検査の基準が署によって異なる部分が顕著に出た事例だったので、紹介したいと思います。

検査官は大阪市内とそれ以外で異なる

まず前提として、キャバクラやラウンジのような、いわゆる1号営業と言われる社交飲食店許可については、許可申請をした署の判断で最終的に許可が出されます。

 

ですので、署の生活安全課の担当者が書類を受理し、同じ人が現場の立入検査に来るというのが基本です。

 

しかし、梅田や北新地、ミナミなどの繁華街を管轄する署は当然取り扱う件数が多いので、署の担当者が全てのお店の検査に立ち会うことは物理的に不可能なんですよね。

 

なので、大阪市内に限っては、申請の受理(書類のチェック)は署の担当者が行い、現場への立入検査は浄化協会という組織に委託しています。

 

この浄化協会というのは、まぁ簡単に言えば大阪府警のOBの人たちから成る組織です。

 

警察を定年退職した人が浄化協会に残って風営法の立入調査を受託しています。

 

大阪市内の検査は基本的に全て浄化協会の人が回るので(ゲームセンターは除く)、いつも同じ人が検査に来ます。

 

ということは、当然、現場での判断基準というものはある程度統一されていますし、僕のようにいつも浄化協会の検査に立ち会っている行政書士からすれば、「ここは指摘を受けそうだな」という部分が予想できるので、対策を立てやすいと言えます。

 

一方で、大阪市以外においては、浄化協会に検査を委託していませんので、署の担当者自らが現場検査に向かいます。

 

そうなると、人間ですから担当者ごと判断基準に差が生じますよね。

 

もちろん、風営法に明記されている構造設備に関する基準というのはあるわけですけど、風営法の条文というのはきわめて曖昧で主観が入らざるを得ないような項目が多いわけです。

担当者によって判断が異なった実際の事例

例えば「見通しを妨げる」という文言ひとつ取っても、「高さ1m以上のものは設置してはならない」とは記載されていますが、それ以外でお店の形がL字になっている場合、奥まっている部分は見通しがあるのかないのか、捉え方によって結論が異なります。

 

事実、大阪市内の検査であれば、浄化協会はL字の構造についてけっこう厳しく指摘をしてきますので、高さ1m以上のものを設置していなくても、「そもそもの形状が見通しを妨げる」という判断をされることがあります。

 

しかし、先日申請した大阪市以外の申請では、L字の形状については特に指摘を受けませんでした。

 

もちろん、「L字だからダメ」というわけではなく、全体の広さやL字部分の割合など総合的に勘案して判断されるわけですが、やはり主観が入ると言わざるをえません。

 

また、このラウンジはL字だけではなく、市内では間違いなく指摘を受けるであろうもうひとつの問題点がありました。

 

客室内にカウンターが設置されてあるのですが、おお客さんが使用するカウンターであれば、これについても基本的に床からの高さが1m以内である必要があります。(例外はありますが、それはまた別の機会に・・・)

 

このお店のカウンターは、床からの高さが90㎝だったのでOKのはず・・・なんですが、カウンターの部分だけ床上げされており、他のボックス席の部分と比べると15㎝ほど床が高くなっていたんですよ。

 

要するに、フロアレベル0の部分と比べると、カウンターの部分は床が+15㎝なので、実質カウンターの高さが90+15=105㎝なので、1m以上のカウンターを設置しているのと同じだと解釈されてしまう余地があります。

 

実際、大阪市内であれば、恐らく浄化協会はそのような判断をするはずです。

 

しかし、今回は大阪市以外のある署での申請だったので、そこについては指摘されることなく、カウンターが1m未満なのでOKということになりました。

 

結果だけ見れば「よかったね」ということなんですが、万が一指摘を受けていれば、そのままでは許可がおりないので是正する必要があります。

 

床のレベルを下げるか、カウンターを低くするか、どちらにしても工事が必要ですので、余計なお金と時間がかかります。

 

または工事しないということであれば、カウンター部分は客室として使えず、女の子の待機場所という扱いにせざるを得ません。

 

この場合、本当にその部分をお客さんに使わせないということについて、誓約書を書かされますし、許可が出た後に警察の立入があった場合、その場で客がカウンターで飲んでいたらアウトです。

 

この場合、客室として許可されていないところを客室として使ったということで「構造設備の無承認変更」という風営法違反になり、条文上は許可取り消しも対象となるとされています。

 

というか、「この部分だけは使わせません」って誓約したところで、実際は絶対使いますしね(笑)

警察もそれを分かったうえで一旦許可を出し、本当に守ってるか後日チェックに行くわけです。

 

営業者としては当然、営業中に警察の立入なんて来てほしくないですから、最初から「優先的に立入に行く理由」を与えない、クリーンな内容であっさり許可を取ることが大切です。

 

今回は、前述のような問題点を指摘される可能性があること、指摘された場合は是正措置もしくは何らかの条件を突きつけられるかもしれないことを事前に申請者に伝え、納得して頂いていたので仕事を受けました。

 

このようなグレーな部分がある申請は、ある意味“出たとこ勝負”になってしまうことが多いのが実情です。

 

なぜなら、仮に図面を持って署の担当者に事前相談に行ったとしても、図面からわかる“明らかな風営法違反”以外しかその場では指摘しようがなく、「実際に現場に行って見てみないと分からない」と言われて突き返されるのが関の山だからです。

まとめ

今回は

・大阪市と大阪市以外では許可申請時の現場検査官が異なること

・大阪市以外では、署の担当者によって判断基準にブレがあること

 

を先日の具体的事例をもとに説明してみました。

 

判断基準にブレが出そうなところ=微妙な部分については「経験による予測」と「もし指摘された場合の対処の想定」が何より必要になり、こういう部分も一般的に風営法実務を嫌がる行政書士が多い理由のひとつではないかと思われます。(他にも理由は色々ありますが・・・笑)

 

今後も、なるべく具体的な事例を引き合いに解説していきたいと思います(^^)

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