行政書士の松井です。
深夜酒類提供飲食店や社交飲食店、麻雀店など、風営法の届出・許可手続を進めるにあたり、飲食店営業許可も同時に取得しなければならないケースは非常に多いです。
例えお酒しか出さないという店でも、お酒=「飲」食物の提供=飲食店営業、ということになるからです。
そして、食品衛生法の改正により、2021年6月1日以降に申請する飲食店営業許可については、従来の設備基準に一部変更がありました。
そこで、今回は飲食店営業許可基準の変更点について解説したいと思います。
変更となった営業許可基準のポイントは2点
従来の飲食店営業許可の設備基準は、主に以下を満たす必要がありました。
- 2槽シンクの設置
- 2槽シンクの各槽にお湯が出る
- 手洗設備の設置
- 扉付きの食器戸棚の設置
- 排水溝の設置(調理をしない場合を除く)
この中の「手洗設備」についてが一つ目の変更ポイントです。
①手で回す蛇口の手洗器では許可が出なくなった
通常、手洗設備は以下の画像のような、手で回す蛇口がついているタイプがほとんどだと思います。
2021年6月1日以降、このような手洗器では許可がおりません。
手指を接触せずとも洗浄できるタイプの手洗器であれば許可がおります。
具体的には以下のような手洗設備です。
自動水栓
足踏式
レバー式(手指を接触せず肘など操作できるものに限る)
これは、『手を洗った後に再度蛇口に接触するで再汚染してしまうことを防ぐ』という趣旨です。
居抜き物件などを契約する際、厨房内に手洗器が設置されている場合も多いかと思いますが、ほとんどが手で蛇口を回すタイプのものです。
面倒ですが、営業許可を取得するためには基準に適合した手洗器に変更する必要があるということですね。
ちなみに、手洗器の変更にかかる費用はモノによってピンキリですが、恐らく最も費用を抑えられるのは最後に紹介したレバー式だと思います。
レバーハンドル自体はネットで買えば数千円で手に入ります。
逆に、自動水栓の手洗器を新品で一式購入すると、5万円前後はかかってしまうようです。
②トイレ内に専用の手洗器を設置しなければならない
次に2つ目の変更点として、トイレ内の手洗器です。
今回の法改正により、トイレ内に専用の手洗器を設置する必要が生じました。
「専用」ですので、厨房の手洗器と兼用ということでは通りません。
また、トイレのタンクの流水で代用することは不可ですので、契約した店舗のトイレ内に手洗器がない場合、費用がかかりますが設置する必要があります。
先日同業の先生達と話している際、「タンクの流水でもいいのでは?」という話題になったのですが、翌日保健所に確認を取ったところ、「タンクの流水では不可」という回答でした。
ちなみに、厨房内の手洗器とは異なり、トイレ内の手洗器については手で回す蛇口がついたタイプでも大丈夫です。
また、店舗内にトイレがない場合でも、建物内に複数のテナントで共有するトイレがあり、トイレ内に専用の手洗器がある場合は許可が出ます。
まとめ
食品衛生法の改正により、営業許可業種が34種から32種に再編されたり、新たに届出制度ができたり、HACCPが義務化されたりと、様々な変化が生じました。
その中でも風営法関連の事業者にとっては、飲食店営業許可の許可基準が変更になったということが大きいと思いますので、今回は大きな変更点である2つを解説しました。
特に、風俗営業の中でも1号営業(社交飲食店)は飲食店営業許可が必須であり、飲食店営業許可証がなければ風俗営業許可も出ません。
これから営業を始める方にとっては、許可基準に適合するために多少費用が掛かることもあるかと思いますが、手洗い設備の変更だけで莫大な金額になることはないかと思いますので、必要投資として割り切るしかないのなという感じですね。
以上、参考にして頂ければ幸いです。