風営法と従業員名簿 立ち入り調査で必ず確認されるポイントとは?

ども、行政書士の松井です。

 

風営法の許可や深夜酒類営業の届出といった手続を無事クリアして実際に営業していると、どこかのタイミングでほぼ必ず警察の立ち入りが来ます。

 

立ち入りといっても、たいていの場合は逮捕しにくるわけではなく(やましいことがある場合は別ですがw)、きちんと適法に営業しているかどうか各お店をチェックして回っている中での一環です。

 

まぁ巡回みたいな感じですね。

 

立ち入りが入っても特段何もなければ警察はさっさと帰るのですが、かなりの確率で指摘され、後日指示処分が出されることがあります。

 

それは、従業員名簿に関する不備。

 

後日署に呼び出されたり是正措置を取ったりと、色々めんどくさいので、従業員名簿はきちんと備え付けておきましょう。

 

というわけで、今回は警察の立ち入りが入っても一切動じないための「正しい従業員名簿の作り方」について書きたいと思います。

従業員名簿には何を記載すればいい?

従業員名簿とは、その名のとおり従業員の氏名や連絡先等、「どんな人が業務に従事しているのか」を明確にするための書類です。

 

従業員名簿は、風俗営業だから必要だというわけではなく、実は労働基準法で定められたものなんですよね。

つまり、風営法が絡まない普通の飲食店であっても備え付ける義務があるというわけ。

 

ちなみに、労働基準法第107条ではこのように定められています。

・使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。

・前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。

 

で、従業員名簿にはどんなことを記載すればよいのかというと、以下の事項を記載しておく必要があります。

 

  1. 氏名
  2. 生年月日
  3. 履歴
  4. 性別
  5. 住所
  6. 従事する業務の内容
  7. 雇用年月日
  8. 退職年月日

 

まぁ普通、従業員を採用する際は履歴書持参で面接すると思うんで、上記のような程度のことは把握しておいて当然だと思うんですけどね。

 

ただ、実際は水商売や風俗店なんかはワケありの人なんかも多いわけで、店側もそれに配慮してろくに素性も把握せず採用しちゃって問題になった場合が過去にたくさんあるわけで・・・。

 

一番やばいのは18歳未満の子を雇ってしまったっていうケースですね。

こうなったら許可が吹っ飛びます。

 

そうならないためにも、きちんと素性を把握して、その内容を従業員名簿として備えておく必要があります。

従業員名簿に記載されるべき人の範囲

ここで疑問に思われるかもしれないのが、「従業員ってどこまでの範囲が従業員なん?」ってことですよね。

 

正解は、全員です。

 

フルタイムで勤務するキャスト、週1しか入らないキャスト、黒服、掃除のバイト、店長・・・店の業務に従事する人間は全員従業員名簿に載せてください。

 

たまに「先生、この子たまにしか出勤しないから従業員名簿に載せなくても大丈夫ですよね?」と言われるのですが、せっかく作成するんだから1人漏れなく載せてください。

 

というか、1人でも漏れてると警察の立ち入り時に指示処分食らいますので、せっかく99%真面目にやってても、1%の不備でアウトになるのはアホらしいですよね。

 

眠たいのに朝から署に呼ばれて、反省文と是正した証拠を提出させられるの嫌でしょ?

 

余談ですが、うちのクライアントさんは立ち入りのときに限って従業員名簿に載せてないレア出勤の子がその場にいて気まずくなることが非常に多いです(笑)

従業員名簿の管理方法

従業員名簿は作って終わりではなく、いつ警察がきても大丈夫なように、きちんと管理して備え付けておく必要があります。

 

まず、複数店舗があるような場合は、どこかで一括して管理するのではなく、それぞれの店舗ごとに従業員名簿を作成し、その店舗に備え付けてください。

 

労働基準法では“事業場ごとに”名簿を作成する必要があると定められているからです。

 

また、従業員が退職したからと言って、すぐに破棄してはいけません。

退職してから3年間は保管する義務があります。

 

ちなみに、従業員“名簿”という名称ですが、今のご時世ですから必ずしも紙媒体で保管しておく必要はありません。

 

エクセル等に打ち込んでPC内の保存しておいても大丈夫です。

ただし、いつでも表示・印刷できるような状態にしておく必要があります。

 

icloudやGoogleドライブ等のクラウドサービスを使えば、PCが壊れても消えることはないですし、複数店舗ある場合も店舗間で従業員情報を共有できるので便利ですね。

確認書類も一緒に備え付けておくと万全

従業員名簿を作成する際、従業員の身元をきちんと確認する必要があります。

 

その際の「確認書類」については、以下のものを指します。

日本国籍を有する者
・住民票の写し又は住民票の記載事項証明書(生年月日及び本籍が記載されたものに限る)
※住民基本台帳カードは不可
・戸籍謄本、抄本、全部事項証明書又は個人事項証明書
・一般旅券(パスポート)
・自動車運転免許証(本籍地が記載されたものに限る)
・上記に掲げるものの他、官公庁から発行され、又は発給された書類その他に類するもので当該者の本籍及び生年月日の記載があるもの
※健康保険被保険者証は不可
日本国籍を有しない者
・在留カード、特別永住者証明書
・旅券①(資格外活動許可の証印があるもの)
・旅券②(資格外活動許可の証印がないもの)+資格外活動許可書又は就労資格証明書
色々と書いてますが、日本人なら本籍地が記載された住民票の写し、外国人なら在留カードや特別永住者証明書が無難だと思います。
昔は免許証に本籍地が記載されていましたが、今はICカードタイプになっているので本籍地は記載されていないものがほとんどですからね。
採用時に住民票や在留カードのコピー等を提出してもらい、従業員名簿と合わせて保管しておきましょう。

従業員名簿に関する罰則

従業員名簿を備え付けていない場合、法律上「10日以上80日以下の営業停止(基準期間20日)処分、100万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。

 

まぁ、よほど何度指導されても従業員名簿を備え付けていない等の悪質な場合を除いて、1人分抜けてたからといっていきなり営業停止になることは実際考えにくいですが、何度も言うように指示処分は食らいますのでめんどくさいです。

 

それに、一度不備があれば警察からすれば「この店は大丈夫か?」と心象が悪くなりますので、比較的短いサイクルで再度立ち入りが来る可能性があります。

 

そうなるとほんとめんどくさいんで、従業員名簿はしっかり保管しましょう。

 

逆に言うと、お店の構造を勝手にイジッてたりだとか、18歳未満雇ったりだとか、店内で卑猥行為させてるだとか、明確な違法行為がなく健全に営業している場合、警察も従業員名簿くらいしかチェックするところがないですから、そこだけ確認して帰っていくことがほとんですよ。

従業員名簿に関する注意点

フィリピンパブや中国クラブ等をはじめ、外国人を雇用する場合は在留資格と在留期間に注意してください。

風俗営業に従事することができない在留資格の外国人を雇っていると、店側にも罰則があります。

 

また、「従事する業務の内容」欄に深夜酒類営業の届出をして営業しているガールズバーなのに「接待行為」につながる内容を記載していると墓穴を掘るようなものです(^^;)

 

あと、たまにあるのですが、「氏名」欄には源氏名ではなく本名をフルネームで書いてくださいね(笑)

 

住所も現住所を書くようにしてください。

従業員名簿をダウンロード

今回は従業員名簿について色々と書いてきましたが、「結局どんなんを作ったらええねん!」という声が聞こえてきそうなので、そのまま使えるひな形をダウンロードできるようにしておきました。

 

従業員名簿はコチラからダウンロードして使ってください(^^)

 

クリックすると自動でダウンロードできるようになっています。

 

というわけで、警察の立ち入り時に速やかに帰ってもらうためにも、従業員名簿はきちんと作成して保管しておいてくださいねー!

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