行政書士の松井です。
大阪の飲み屋街と言えば北新地が有名どころですが、意外と風俗営業許可を取っていない店が多いそうです。
理由は様々でしょうが、割と多いのは「取りたくても取れない」という事情。
これは一体どういうことなのか?
というわけで、今回は大阪の中でも北新地に焦点を当てて、社交飲食店(キャバクラ・クラブ・ラウンジ等)の許可について解説したいと思います。
北新地という場所自体はクラブの許可は取りやすい
クラブやキャバクラのような社交飲食店と呼ばれる風俗営業許可。
この許可は
- 人
- 場所
- 店の構造
の3つの要件を満たす必要があります。
1つめの「人」の要件については、人的欠格事由というもので、「こういった人には許可を出しませんよ」という条件が法律に列挙されています。
簡単に言えば、過去に1年以上の懲役に入った人、一定の罪で1年未満の懲役刑または罰金刑に処せられたことがある人、風俗営業許可を取り消されたことがある人等は要注意。
人的欠格事由についてはコチラに詳しく書いていますので、参考にしてください。
次に2つめの「場所」の要件。
これは周囲に保全対象施設(学校や病院等)がある場合は許可が取れないという規制ですが、北新地の場合はこれがありません。
これは、条例で定めた一定のエリアは保全対象施設の有無に関係なく場所の要件を満たすというもので
- 曽根崎新地1丁目
- 堂島1丁目
- 堂島浜1丁目
という北新地と呼ばれるエリアのほとんどが対象となっています。
風俗営業許可は場所の要件を満たしていないとどうにもなりませんので、このハードルがなくなるというのは本来的には許可はめちゃくちゃ取りやすいはずなんです。
では、なぜ許可が取れないケースが発生するのでしょうか?
北新地のクラブで風俗営業許可が取れないケース
それは、3つめの要件である「店の構造」が原因です。
弊所に「許可が取れない」と相談がきた案件のうち、ほとんどがこの「店の構造」がネックとなっていました。
店舗にもよりますが、北新地のクラブはカラオケルームやVIPルームのような個室を設けている店が多いです。
中には収容人数6人が限界くらいの小さな個室を何個も作って、まるでカラオケボックスのような構造になっているお店もあります。
個室を作ること自体は問題ないのですが、風営法で定められた要件を満たさなければなりません。
最もネックになるの個室の広さです。
2以上の客室を設ける場合、1室あたりの広さが16.5㎡以上必要であると定められており、これを満たしていない狭めの個室は客室として使えないということになってしまうんですね。
行政書士に相談しながら内装工事を進めるというのであれば、この規制を踏まえたうえのでデザインにできるので問題ないですが、居抜き物件を借りてそのまま使いたいという場合に問題が発生します。
- 要件を満たすように個室を作り直す(もしくは潰す)工事をする予算が取れるか?
- 個室を潰す場合はそもそもの希望デザインと異なってしまう
- 仮に工事をするにしてもビルオーナーが了承してくれるか?
といったことで困っているという相談を何度も受けてきました。
居抜き物件の注意点
居抜き物件を借りる際、不動産屋から「ここは前もクラブだったので大丈夫ですよ」と言われることがあります。
…が、不動産屋の「大丈夫」は当てにしないでください。
そもそも前は無許可営業していたという可能性も大いにあります。
また、風俗営業許可はビルオーナーの使用承諾書を取り付けないといけませんので、ビルオーナーの理解が得られないと申請できないという側面があります。
以前、広さの要件を満たしていない個室を客室ではなく従業員待機室として用途を変更して申請したいという話を受けたときのこと。
弊所としては当然クライアント様の言葉を信じて受任します。
しかし、ビルオーナーに
「どうせ客室として使うだろう。コンプライアンス的に虚偽の申請に使用承諾書は出せない。」
と主張されました。
借りてもらってる顧客なのに誰の味方か分かりませんよね(笑)
私もクライアント様と一緒にビルオーナーのもとへ出向き、諸々説明したのですが、結局首を縦に振ってもらえませんでした。
ちなみに、あまりに頑なに話を聞いてくれない方だったので、最後に私が
「この物件は社交飲食店として賃貸されてるんですよね?使用承諾書を出せないということであれば、テナントが無許可営業するのを黙認するんですか?コンプライアンス云々とおっしゃるのであれば、その方がまずいんじゃないですか?」
と突っ込んだときは、さすがに口ごもってましたけどね(^^;)
でも、世の中色んなビルオーナーが存在しますので、話が分からなかったり融通が利かないという方も多いです。
北新地でクラブの許可を取るなら物件契約前に事前相談を
以上を踏まえて、北新地でクラブを開業する際は、物件を契約する前に風営法に強い行政書士に一度相談されることをオススメします。
物件を契約してしまった後に許可が取れないと発覚すれば、即解約するか無許可営業するしかありません。
テナントビルで即解約は金銭的にも厳しいでしょうから、実際はほぼ無許可営業一択になってしまいます。
そうなると
- 営業中に何かあっときに警察を呼びにくい
- 競合店からの密告のリスク
- 摘発のリスク
というデメリットを負いながら堂々と営業できないという事態になってしまいます。
せっかく大きな資金を動かして北新地という大阪の一等地でビジネスを始めるのに、それではあまりにもったいないです。
弊所では、物件の内覧に同行して店の構造や周囲の環境を調査します。
そして、現状のまま許可が取れるのか?取れないのであればどこに手を加える必要があるか?をコンサルします。
さらに、ビルオーナーに承諾してもらう必要があることをあらかじめお伝えするので後になって揉めることはありません。
それらの条件が揃ってから物件を契約してもらうので、確実に許可を取得して合法営業にもっていくことができます。
まとめ
今回は北新地でクラブ(社交飲食店)を出店する際に注意するべきことを弊所の事例も踏まえて解説しました。
- 場所の要件はほぼ無条件に満たしている
- ネックになるのは店の構造
- 個室に要注意
- ビルオーナーの理解を得ることが大事
- 物件契約前に専門家に要相談
北新地は客層的にも個室が好まれることが多いですし、店側もニーズに応えたいですよね。
だからこそ、合法的な個室で営業できるように、何よりお金と時間を無駄にしないように、物件を契約する前に専門の行政書士に一度ご相談して下さい。