行政書士の松井です。
メイドカフェというものは既にポピュラーな事業形態ですが、近年はコンセプトカフェ=通称“コンカフェ”なるものが流行しています。
コンカフェとはその名のとおり、ひとつのコンセプトを前面に押し出した独自の世界観を楽しめるお店で、カフェとは言え夜はバータイムとしてお酒が飲めるところも多いです。
コンカフェの種類としては、メイドや忍者、執事や男装などのコスプレ系、猫カフェなどの動物系、アニメや漫画とコラボしたコラボ系など多岐に渡り、発想次第で無限に広がるビジネスモデルと言えます。
厳密にいえばメイドカフェもコンカフェの中の一種になりますね。
最近ではコンカフェについての相談や質問を受けることが増えてきましたので、今回はコンカフェをテーマに法的な位置づけや許可が必要な場合等を解説していきたいと思います。
コンセプトカフェ(コンカフェ)の法的な位置づけ
まず、コンカフェの法的な位置づけを考えてみます。
※動物系のコンカフェは除外し、スタッフがコスプレをして接客するようなお店を前提とします。
世間一般で想定されるコンカフェの営業形態としては
- コスプレをしたスタッフとカウンター越しに会話をする
- 飲食物の提供の際に何らかのサービスがある(メイドがオムライスにケチャップで絵を描いてくれる等)
- チェキ撮影ができる
他にも店によって様々なサービスがあるとは思いますが、メインは上記のような感じでしょう。
スタッフとカウンター超しにずっと会話を楽しめるという点では、ガールズバーに近い営業形態ですね。
そして、ガールズバー同様、コンカフェでもこのように「特定の客について会話をしながら一緒に飲食をする」という行為は、風営法でいう“接待行為”に該当します。
したがって、本来であればこのような形態のコンカフェは風俗営業許可を取得して行わなければならないのです。
ただ、現実としてはガールズバー同様、風俗営業許可を取らずに営業しているお店がほとんどにように思います。
風俗営業許可ではなく、“深夜酒類提供飲食店営業の届出”という手続で営業をしているお店も多いです。
ちなみに、深夜酒類提供飲食店営業の届出は、深夜0時以降に酒類を提供する場合に必要な手続であり、この届出では風俗営業のような接待行為はできません。
「ガールズバーが無許可営業をして風営法違反の疑いで摘発された」というニュースが定期的に流れるのはこのためです。
なぜか「カウンター超しの会話なら接待行為にならない」という認識を持たれている方が多いのですが、風営法の条文にはカウンターかボックス席かという区別はされていませんので注意が必要です。
ただ、コスプレ系のコンカフェであっても、接待行為に該当しないような営業をする場合は風営法許可を取得する必要はありません。
- 単にスタッフがコスプレをしているだけで、特定の客とベッタリ会話をすることはない
- 店内の装飾や備品で何らかのコンセプトが楽しめる空間
上記のような場合は、接待行為に該当することは特段ありません。
ただし、深夜0時以降に酒類を提供して営業する場合は前述の“深夜酒類提供飲食店の届出”が必要です。
コンセプトカフェ(コンカフェ)のチェキは風営法違反?
ネットでは「コンカフェでスタッフとチェキを撮るの風営法違反ではないか?」という噂が流れてるようです。
これについては人によって解釈が分かれるところかもしれませんが、僕の見解としては、「単にスタッフと写真を撮ったからといって一概に風営法違反とは言えない」と考えています。
遊びにきた記念に店員さんと1枚写真を、なんてことはコンカフェに限らずどんなお店でもあることですからね。
ただ、スタッフとのチェキ撮影がサービスのひとつとして提供されていたり、撮影の際に体を密着させたりといったことが常態化していればグレーになっていくと思います。
一応、風営法の解釈運用基準というものの中に、接待行為の具体例として
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。
という文言がありますので、社会通念上の「記念写真」を超える撮影サービスのようなものであれば、接待行為に該当する恐れはあるということですね。
コンカフェ(コンカフェ)の開業に必要な営業許可
ここまでコンカフェの法的な位置づけをみてきましたが、結局のところコンカフェを開業するにあたって必要な営業許可は何なのか?をまとめます。
パターンは3種類。
①飲食店営業許可のみ
②飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店営業の届出
③飲食店営業許可+風俗営業許可(社交飲食店)
順番に解説します。
①飲食店営業許可のみ
これは、接待行為はもちろん、深夜0時以降に酒類を提供することもないというお店の場合です。
猫カフェなどの動物系コンカフェであれば、ほぼこのパターンに該当するでしょう。
コスプレ系のコンカフェの場合も、上記の条件を満たせば飲食店営業許可のみでOKです。
②飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店営業の届出
接待行為はしないけれど、深夜0時以降に酒類を提供して営業するという場合はこのパターン。
コンセプト“カフェ”と言えど、酒類をメインで提供しているカフェバーのような形態のお店も多いですからね。
もちろん、0時までに閉店するのであれば深夜酒類提供飲食店営業の届出は不要です。
③飲食店営業許可+風俗営業許可(社交飲食店)
コスプレ系のコンカフェの場合、実態としてはこのパターンに当てはまるものが多いでしょう。
メイドカフェと同様に、スタッフとの会話がメインのサービスになるというコンカフェが多いですし、そういうお店はシャンパン等の高額な酒類も扱っていますよね。
となると、キャバクラやガールズバーと同じく“歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなす”営業となり、接待行為を伴う飲食店営業として風俗営業許可が必要になります。
風俗営業許可の種類は「社交飲食店営業」というものなり、この許可を取ればカウンターやボックス席で特定の客とおしゃべりをしたり一緒にお酒を飲んだりすることが可能です。
チェキについても何らグレーな問題は生じないでしょう。
注意点
風営法で定められた「接待行為」の定義に、性別は関係ありません。
女性スタッフが男性客に対して行うのと同様、男性スタッフが女性客に対して行う場合も接待行為に該当します。
ホストクラブがいい例ですね。
また、同性に対しても同様ですので、男装バーで女性が女性に接待行為をする場合も社交飲食店に該当するということになります。
まとめ
今回は、コンセプトカフェ(コンカフェ)の法的な立ち位置や必要な許認可、その他注意点について解説しました。
- カウンター越しの会話でも厳密には社交飲食店の許可が必要
- チェキ撮影はやり方によってはグレーになる
- 接待行為なしなら飲食店営業許可(+深夜酒類営業届出)で営業可能
- 接待行為に性別は関係なし
コンカフェは路面店も多いので、外から中の様子が見えてしまいます。
繁華街だと所轄の警察が巡回にきていたり、他のお店に立ち入りに来た帰り等に見られる可能性がありますよね。
実際にコンカフェを何店舗か経営するグループが無許可営業で逮捕されたというニュースが流れていました。
知らず知らずのうちに違法営業になってしまわないように、今回の記事が参考になればと思います。