ナイトクラブ・ライブハウス・ショーパブ等の許可
風営法には「特定遊興飲食店」という営業種目が定められています。
ちょっとわかりにくいですが、
- 設備を設けて
- 客に遊興をさせ
- 深夜0時以降にお酒を提供する
この3つの条件が全て揃った営業をする場合、風営法の特定遊興飲食店に該当し、許可が必要になります。
・ナイトクラブ、DJバー
・ライブハウス
・ショーパブ
・その他恒常的に遊興イベントを催す飲食店
「遊興をさせる」とは?
遊興をさせるとは、「営業者の積極的な行為によって客に遊び興じさせること」を意味します。これだけではよく分からないので、少しずつ具体的に書いていきます。
客に遊興をさせるためのサービスとしては、主として、ショーや演奏の類を客に見訊きさせる「鑑賞型」のサービスと、客に遊技、ゲーム等を行わせる「参加型」のサービスに分類されます。
①不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興業等を見せる行為
②不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
③客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
④のど自慢大会等の遊技、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
⑤カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為
⑥バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為
上記のような行為に対して、単にテレビの映像や録音された音楽が流す場合や、客が自ら勝手にカラオケを歌うような場合は、「営業者の積極的な行為」ではないので、遊興には当たりません。
ちなみに、上記の具体例では「不特定の」という文言を多用していますが、逆に「特定の」客に対してカラオケを勧めたり手拍子やデュエットしたりする行為は「接待行為」に当たります。
特定遊興飲食店営業では接待行為はできませんので、接待行為を行う場合は特定遊興飲食店営業ではなく風俗営業(キャバクラ等)の許可を取る必要があります。
また、風営法で次のような「営業としての継続性及び営利性がない行為」は特定遊興飲食店には該当しないと定めています。
①日本に所在する外国の大使館が主催する社交パーティー
②結婚式の二次会として、新郎・新婦の友人が飲食店営業の営業所を借りて主催する祝賀パーティー ※
③スポーツバー等で、オリンピックやW杯の決勝戦等の特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意志を持たずに短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合
④野外フェス等の催しについては、1回につき1晩のみ開催されるもので、引き続き6ヶ月以上開催されない場合(逆に言えば、2晩以上にわたって開催されるものは継続性が認められるので特定遊興飲食店営業に当たることになります)
※主催者は特定遊興飲食店営業の許可を受ける必要はありませんが、営業者については、営業所を有償で貸し、深夜において酒類を提供するとともに、 パーティーの余興に合わせて照明や音響の調整を行うという行為を反復継続しようとする場合は、当該許可を受ける必要がある場合があります。
特定遊興飲食店の営業時間の制限
特定遊興飲食店の許可を取ることで、ナイトクラブ等は朝まで合法的に営業できるようになりましたが、都道府県の条例によって一部の時間は営業不可と定めることもできるようになっています。
午前5時から午前6時までの時間・兵庫県
午前6時から午前10時までの時間
趣旨としては、酔っ払った客が通勤・通学中の一般人に絡んでトラブルになることを防ぐという目的があります。
大阪府と京都府は朝5時〜6時の1時間だけなので、「始発でさっさと帰れ」という意味なのでしょうね。
兵庫県は午前6時〜午前10時まで、4時間ガッツリ規制してトラブル排除を徹底している印象です。
特定遊興飲食店の許可要件
特定遊興飲食店営業は、風俗営業ではありません。ですが、風営法の管理下にある営業形態であり、風俗営業と同様に人的欠格事由や営業地域制限、構造設備要件をクリアしないと許可がおりません。
つまり、法改正によってナイトクラブ等の営業は風俗営業から外れたとは言え、実質的には風俗営業とあまり変わらない、要件によってはさらに厳しい規制を受けることになっています。
①人的要件
人的要件とは簡単に言うと「こんな人には風営法の許可をあげませんよ」という要件です。
例えば、1年以上の懲役刑に処せられたことのある人は、出所してから5年を経過するまでは社交飲食店などの営業者になれません。
この人的要件にひっかかっている場合、その人が申請者として申請する許可に関しては天地がひっくり返っても許可がおりませんので注意してください。
②場所要件
ナイトクラブやライブハウスなどの風俗営業には、営業できる場所とできない場所があります。
こちらも人的要件と同様に、営業できない場所で申請しても許可はおりません。
特定遊興飲食店は、営業可能な地域が非常に狭いのが特徴で、許可を取るうえで一番のネックになっています。
大阪府でいえば、北区と中央区の一部の地域、いわゆるキタとミナミの繁華街でしか営業できません。
次の(ア)(イ)いずれにも該当する地域(ホテル等内適合営業所を除く)
(ア)風俗営業の営業延長許容地域(深夜1時まで営業できる地域)
大阪市北区
梅田一丁目(1番から3番及び11番)、角田町(1番及び5番から7番)、神山町(2番から10番)、小松原町、曾根崎一丁目、曾根崎二丁目、曾根崎新地一丁目、太融寺町、兎我野町、堂島一丁目、堂島浜一丁目、堂山町(1番から13番まで、16番および17番に限る)、及び西天満六丁目の区域
大阪市中央区
心斎橋筋一丁目、心斎橋筋二丁目、千日前一丁目、千日前二丁目、宗右衛門町、道頓堀一丁目(1番から10番までに限る)、道頓堀二丁目、難波一丁目、難波二丁目、難波三丁目、難波四丁目、難波千日前(1番から3番及び10番から13番までに限る)、西心斎橋一丁目、西心斎橋二丁目、日本橋一丁目(2番、3番及び18番から20番までに限る)、日本橋二丁目(5番に限る)、東心斎橋一丁目及び東心斎橋に丁目の区域
(イ)保全対象施設※の敷地の周囲おおむね100メートル(当該施設の敷地が商業地域にある場合は50メートル)の区域外の地域
※特定遊興飲食店の保全対象施設(大阪府)
①児童福祉法第7条第1項に規定する児童福祉施設(児童等が入所するものに限る。)
具体的には・・・
・助産施設
・乳児院
・母子生活支援施設
・児童養護施設
・障害児入所施設
・情緒障害児短期治療施設
・児童自立支援施設
②医療法第1条の5第1項に規定する病院若しくは同条第2項に規定する診療所
「病院」と「入院設備のある診療所」のことを指します。
このように、営業可能な地域が極めて限られており、保全対象施設の範囲も風俗営業とは少し異なっています。
まぁ、法律の趣旨が「クラブのように深夜にワイワイ騒ぐお店」を想定しているので、深夜にうるさくしても住民の迷惑にならない場所といえば必然的に上記のような繁華街に絞られてくるんですね。
特定遊興飲食店を始める場合、不動産を契約してから許可がおりないことが発覚すれば、多大な金銭的損害を被ってしまいます。
よって物件を契約する前に念入りに調査することが重要です。
③構造要件
お店の構造に関する要件も定められています。
→それなりの広さが必要となります。
→高さ1m以上の物を置いたらダメ。その他見通しが悪い構造はNG。
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
→店内に卑猥な写真やポスターを貼らないでね。
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口についてはこの限りではない。
→VIPルームその他あらゆる客室に鍵はつけたらダメ。ただし、その客室の出入口=お店自体の出入口の場合はOK。
・営業所内の照度が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を維持すること。
→明るさが10ルクス以下になったらダメ。明るさを変えられる装置(スライダックス等)も設置したらNG。
騒音又は振動の数値が一定の数値に満たないように維持されるための必要な構造又は設備であること。
→防音対策をすること。例えば大阪府の商業地域の場合、営業所内からの音漏れが55デジベル未満となっているか確認。
特定遊興飲食店の許可申請において、立入検査時に毎回苦労するのが「10ルクス」という照度の確保です。
10ルクスと言われてもピンとこないかもしれませんが、だいたい上映前の映画館の明るさを想定してもらえればいいかなと思います。
・・・想像しましたか?
これ、けっこう明るくないですか?
特にナイトクラブを想定すると、ありえない明るさですよね、
そもそもこんな明るさでレーザーやらパーライト、ストロボなんかの特殊照明を使っても全然意味がありません(笑)
ということで、実は10ルクスという照度を「どこで測るか」という点も風営法で定められています。
要件を満たせば、特殊照明を使うフロアだけは暗くすることもできます。
これについてはコチラで書きましたので参考にしてみて下さい。
風営法では基本的な構造要件が定められていますが、実際のところ、現地調査での担当官の判断によるところが大きいです。
例えば、「客室内の見通しを妨げる設備を設置してはならない」という要件。
一応、床からの高さが1m以上の物は見通しを妨げる設備とみなすという具体的解釈は出ているのですが、店舗によって構造は千差万別ですし、高さ制限以外のところにおいても「これは見通しを妨げる構造か否か」という判断が分かれるところです。
したがって、場所的要件と同様に、物件契約の前に慎重に検討する必要があります。
特定遊興飲食店の許可を取るポイント
大阪府における特定遊興飲食店の許可を取得するのに要する期間は、申請してから55日が目安です。
ナイトクラブのような大型店舗の多い特定遊興飲食店については、店舗数も限られている分、実務経験のある行政書士が非常に少ないのが業界の特徴です。
ですが、弊所は法改正前の風俗営業としてのナイトクラブの許認可手続、法改正時の「旧3号営業(風俗営業)→特定遊興飲食店への以降手続」、そして現在も常にナイトクラブ等の特定遊興飲食店の許認可実務をこなしています。
そんな弊所だからこそ知っている、特定遊興飲食店の許可を取得するポイントをお伝えします。
①デザイン段階からの警察との協議
ナイトクラブ等の特定遊興飲食店は、設備や内装にもそれなりのコストをかけることになります。
つまり、「申請して通らなかった」では莫大な額の損失が生じてしまいます。
そうならないためにも、デザイン段階から所轄の警察署と協議していく必要があります。
特にナイトクラブは店舗内でフロアーレベルが異なる立体的なデザインだったり、DJブースの場所、VIPルームの設置など、やりたいことがたくさんあると思います。
それをいかに風営法の規制内に落とし込んで、警察を納得させられるか。
行政書士の実務経験・実力が試される一番のポイントでもあります(^^)
②照度検査をパスするレイアウト構想
特定遊興飲食店は、営業所内の照度(明るさ)が10ルクスを超える必要がありますが、ナイトクラブのフロアがそんなに明るかったら興ざめですよね。
先ほど、要件を満たしたレイアウトにすればフロアは照度の測定対象外となると言いましたが、あまりに露骨にやると
「フロアで測られないためのダミーのレイアウトだろ」
と突っ込まれてしまいます(笑)
そうならないように、事前協議や入検査時の照度検査をスムーズにパスするためのレイアウト構想が必要です。
ちなみに、弊所で取り扱った特定遊興飲食店の立入検査では、こちらの主張する照度測定場所が却下されたことは一度もありません。
特定遊興飲食店の立法趣旨のひとつが「朝まで営業認めてやるから、店内明るくしろよ」ということなので、許可を取るに当たって照度は大きなポイントになります。